名画座

『モロッコへの道』と『ヒズ・ガール・フライデー』を観てきた。どちらも1940年代初頭の作品である。後者はずっと前(たぶん大学生時代)に映画館で観たことがあるのだが、前者はスクリーンでは未見だった。DVD全盛の時代に、ありがたい機会である。

映画は映画館で観るものである。たとえ技術がどう進歩しようと、映画が映画を名乗る以上、それが基本だ。だから個人的には、映画館で観た作品だけを「観た」と言うことにしている。学生たちは、ともすれば映画館へ足を運ばず、ツタヤで借りてきたDVDを自宅のテレビやパソコンで視聴しただけで、「観た」と称す。DVDやビデオを否定するつもりは毛頭ないが(ぼくもずいぶんお世話になっている)、しかし両者は経験の性質としてまったく異なることを忘れてはならない。

で、今日行ってきた映画館は、シネマヴェーラ渋谷である。いまどきめずらしい名画座で、ラピュタ阿佐ヶ谷とならんで、ぼくの好きな映画館のひとつだ。二本立てで入替なしというスタイルも、かつての名画座の伝統を引き継いでいるといえる。ちがうのは、設備がえらくちゃんとしていることだろう(もっとも、これで経営的にやっていけるのかと、おせっかいにも心配になるのだけど)。

その昔、大学に入るために名古屋からこちらに出てきた大きな理由のひとつは、名画座にかようことだった。名古屋には名画座というものが当時ほとんどなかったのだ。

名画座という存在は、当人たちにそのつもりがあろうがなかろうが、否応なく一種教育的な役割をになうことになる。ネット社会の現代において、わざわざ名画座を張るのなら、なおさらだ。ここも、作品の選び方や特集の組み方などから、そうした意識を強く感じる。

来週は『聖メリーの鐘』を観にゆかねばならない。そういえば、これもジミー・ヴァン・ヒューゼン+ビング・クロスビーだなあ。

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