7月23日(水)はハリー・ポッター・シリーズ最終巻の発売日だった。各地の書店では、魔法つかいのとんがり帽子にマントをはおった売り子が登場したらしい。販促なのだろう。わが市川駅前の大杉書店でも、このくそ暑いさなか、初老の男性店主(?)が魔法つかいのコスプレで、なんとも恥ずかしそうな風情で店頭にたっていた。おつかれさまでした。
で、このハリー・ポッター現象とは何だったのか。ちょうどこの日にさる新聞社からインタビューをうけた。
ぼくの見方によれば、これはグローバリゼーションの文脈で理解すべき現象である。日本の出版産業にとってこのシリーズは、ガラパゴス化した日本のケータイ産業におけるアップルのiPhoneと似たような構図で理解できる。つまり、ハリー・ポッター・シリーズとはグローバル商品なのであり、その意味においてブロックバスターなのだ。だから、熱心に、あるいはなんとなく同シリーズを買ったり読んだりしたひとは、読者というより消費者とよぶほうがふさわしい。その膨大な(なにせ世界で4億冊だ)消費者のうちのいくらかは、読者に転生しうるかもしれない。だがそれは放っておいて自然になるわけではなく、それなりの手立てが必要だ。にもかかわらず、出版界も教育界も事態が理解できておらず、ただただ無為無策である。──という趣旨のことを、具体的なポイントを示しつつお話しした。どのくらい記事に反映されるのかはわからない。
取材のさいごに記者の方は、まるで池からあらわれた女神さまのように、こんな質問をした。どこか他社からもコメントを求められてますか? 「いいえ」と正直に答えたのは、いうまでもない。