映画『僕らのワンダフルデイズ』

小品が好みだ。迷うとなるべく地味そうな作品を観る。これもそうやって入った。残念ながらただ小粒なだけだった。

53歳の主人公竹中直人が、がんで余命半年の身なのだと早合点する。残された時間で何か残したいといって、高校時代に級友と組んでいたバンドを再結成しようとするのだが……というお話。

昨今社会で流通している出来合の型紙ばかりを継ぎ接ぎしてこしらえただけである。人物も状況も物語も主題も、何もかもが予定調和というか、ありきたりである。いいかえれば、いずれも記号的に当てはめただけ。配役にせよ演出にせよ、役柄と役者のタイプとを「同じものを線で結びましょう」という問題に答えるみたいに、ほとんど機械的に落とし込むばかりである。活きるわけがない。それなりにいい役者をそろえ、みな一生懸命やっているのに、まるでわくわくしない。

人物でも物語上でも鍵を握ったかもしれないのは、稲垣潤一のドラマーである。設定上かれだけが、高校時代の友人という人間関係や、舞台となる地縁から完全に切れた位置におり、それゆえにかれらを再接合する媒介となりうる。ところが、ここの設定が練られていないので、たんに話の矛盾をむりやり吸収するご都合主義的な存在としてしか機能しない。

稲垣に演技が期待できないという事情があったのかもしれない。だが仮にそうだとしても、そのぶん稲垣のドラム演奏のパフォーマンスを前景化させるなど、活かしようはいくらでもあっただろうに。

聞こえはいいかもしれないが、ありきたりで中身のない題名。その付けられ方が示唆するとおりの作品であった。