映画『ウォール・ストリート』

オリバー・ストーン監督の『ウォール街』(1987年)の続編。2008年のサブプライム危機が舞台である。

原題には「マネーは眠らない」と副題がついている。ところが、凄んでみせるわりには、えらく拍子抜けである。

サブプライム危機がデジタルネットワークと欲望が結託したグローバル資本主義のひとつの帰結だったというような認識は微塵も描かれていない。グローバルな金融市場の悪魔的なありようにたいする批判的意識は、ただ個人の倫理の問題だけに回収されることで、体よく隠蔽されている。

話はひたすら、「いいもの」と「わるもの」の二分法というハリウッド的常套手段で進められ、後者が血祭りにあげられる一方で、やたらに「金以上の何か」を強調することで、何かが解決したかのようなお話を語る。なんだか80年代以上に牧歌的である。

全体に、マイケル・ダグラスをかっこよく見せることに腐心しており、その点で『アメリカン・プレジデント』に似た印象を与える。プロモーション・フィルムを見せられているみたいなのだ。

シャイア・ブラーフの主人公は、いちおう悩んだり、失敗したりはするが、物語をとおしてあまり成長(=変化)しないのは、脚本がよくないとおもう。同じことは、「ゲッコーの娘」を演じるキャリー・マリガンにもいえる。とってもうまいし、かわいいけど。

21世紀の世界が、こんな甘くて微温くて、いいのだろうか? かえって心配になってくる。

余談ながら、チラリと登場するチャーリー・シーンの様相が一変しているのには、戦慄させられる。