木が好きだ。
狭くてかまわないので庭がほしいとおもったのは、木が植えたかったからだった。だから、いまの家に越してきて最初にしたのは、シャベルと苗を買ってきて、庭に木々を植えることだった。
近所の林や、大学の構内で拾ったどんぐりをプランターに植え、出てきた芽を移植したりもした。
そうして植えた苗木たちは、7年ちかく経って大きく伸びた。どの木もそれぞれ、木らしい木の姿をしている。
いまは梅が実をつけている。3本ある梅の木のうちの1本だけ収穫した。残り2本はまだ早く、もう1-2週間待ってみることにした。
若い苗木のころは、毛虫が大量発生したこともあった。だが、いろいろな植物を混植し、梅の木自体も生長したためか、ここ数年は、そうした事態が生じることはない。薬品防除はしないので、毛虫は少しはいる。だが、バランスを崩すほど極端に発生することはない。
母屋の前のいちばん陽当たりのいい場所にあるのは、林檎の木だ。紅玉である。作業性を確保するために矮性台木をつかって背丈を抑えるような近年よくみられる品種に比べると、原種に近い。300年前にニュートンがながめていたような大木になる。
いまや母屋の軒の上に達するまでに生長している。春には白い可憐な花を咲かせる。そして、温暖な千葉であっても、ちゃんと実をつける。
もっとも、こちらもなんの防除もせず放置しているから、実際に秋に赤い紅玉の実として結実するのはせいぜい2-3個。大半は、それまでのあいだに風に吹かれて落果してしまう。
この時期は、朝になると小さな実がいくつも芝の上に落ちている。それをひとつずつ拾って、ゴーヤとひょうたんを植えた小さな畝の根元に投げてやった。