皆既月食を見たいと子どもたちが言いだし、いつもより遅くまで起きていることになった。
食が始まるまで、DVDで『田吾作ロイド一番鎗』(1927)を観て待った。
ときどきデッキに出て空を見上げる。寒いが、おかげでよく晴れて、月も星もきれいに見えた。
月は天上やや東寄りのところにあった。食は月の左下から始まり、みるみる欠けてゆく。皆既月食となるころには、月は、斑点をともなった赤黒い球体となった。醤油漬けのいくらみたいだった。
NEX-5Nで写真を撮った。望遠レンズも三脚もないので、まともな写真にはならなかったが、まあ、それでもいい。
月食がすすむと、まわりの星がいっそうよくわかるようになった。月の右下にオリオン座があり、三つ星だけでなく小三つ星も見えた。近くにシリウスがあった。月の右上には、おうし座のすばる(プレアデス)も見えた。カシオペア座は北の空の下のほうにあった。
子どもたちも空を見上げながら、おしゃべりしていた。《くんくん》がいった。
「みなさん、皆既月食の時間です。大事な、大事な皆既月食だから、ほんとに大事な皆既月食だから、みんなで空を見上げましょう」
言い終えると、ウケケと笑った。《みの》も《なな》も笑った。
元ネタは、かれらが大好きな映画のひとつ『南極料理人』である。
あんまり寒いので、その連想だったのだろうか。なんにせよ、夜中にちょっと近所迷惑ではあった。