志賀原発周辺のPR施設

3週間ほど前のこと。能登半島へ行ってきた。北陸電力志賀原発の周辺にあるPR施設を見にいってきた。

ここにも複数の施設がある。よく知られているのが北陸電力のアリス館志賀だ。近くには、石川県のやっている能登原子力センターもある。事業者と自治体、それぞれのPR施設という、各地にみられる組合せだ。

どちらもそれなりにお金をかけてつくられ、運営されている。そのお金の出所をたどれば、前者は電気料金であり、後者は税金、ということになろう。

アリス館のほうは、青森県の東通原発のPR施設トントゥビレッジと同じようなコンセプト。おとぎ話のモティーフにして親しみやすさを演出しようと狙っている。子どもウケの安易な姿勢が見え見えである。そのことを誰よりも早く直感的に見抜くのは、ほかならぬ子どもたちであろう。子ども向けに図書の貸し出しをしているが、利用実績はほとんどなさそうだった。

能登原子力センターは、丘の上にたっている。ここで興味深いのは2階にあるオフサイトセンターを、ガラス越しに眺められることであろう。

 ▲能登原子力センターの展示。原発事故のレベルを解説するパネルからは「参考事例」の札がすべて抜かれていた

 ▲ガラス越しに見るオフサイトセンター

この日の天候は不安定だったのだが、ここで落雷に遭った。ものすごい音がして、館内の照明が消えた。すぐに自家発電で復旧したが、原発推進を啓蒙するのが目的の施設で、皮肉なことである。

いずれの施設も、見かけの豪華さとは対照的に、肝心の利用者の姿はほとんどない。どこの原発PR施設へ行っても、同じである。

アリス館志賀の受付で、近くにある花のミュージアム・フローリィという施設の無料券をくれた。

クルマで3分も走ると。海を望む丘のうえに、能登の黒瓦の家並みといったこの地域の風景上の文脈とはまったく無関係に、英国のキューガーデンかと見まごうほど立派な温室がたっている。これが花のミュージアム・フローリィだ。背後には志賀原発の2本の排気筒の頂部が見えた。

温室の中央には水路が切られ、そこをたっぷりの水が流れてゆく。その両脇に熱帯のさまざま植物が植えられている。温室の外にでればイングリッシュガーデンふうにしつらえられた庭園がひろがっている。中も外も、けっこう手がかかっているようだ。

多くの植物が植えられているにもかかわらず、それらがどのような名前や性質なのかを示す標識板は一枚もない。「ミュージアム」を僭称してはいるものの、ここが植物園のような知的な目的をもった施設ではなく、雰囲気だけを考えてつくられていることは明らかだ。

事前に調べたとき、この花のミュージアム・フローリィは、ちょっと不気味な印象をうけた。設置の目的がはっきりしないだけでなく、そもそも設置運営主体がどこにも記されていなかった。

館内を見てみると、こんなパネルがあった。どうやら志賀町が運営しているらしい。原発の廃熱を利用しつつ、原発とからめて「観光資源」化しようと目論んでいるようだ。

この施設が原発がらみで成り立っていることを直接示すものは三つあった。ひとつは、2階の一画に設けられた北陸電力コーナー。二つ目は、外庭のイングリッシュガーデン。ここは「アリスの庭」と名づけられ、それがアリス館志賀に由来することが記されていた。

そして三つ目は、講習室の壁にかけられたパネル。そこには、地球温暖化への対策の必要性や、エネルギーの再利用といったような、事業者や自治体が原発を肯定するさいに用いるキャッチフレーズが記されていた。