エイプリルフール・ネタについて

エイプリルフールに各企業がこぞってネタを競うようになったのは、いつごろからだろうか。BBCの例など古くから有名だけど、いまや日本でもにぎやかだ。悪い話ではない。今年(2016年)わりに気に入ったのは、ロームという半導体メーカーの「運命センシング技術搭載パンUNMEI-0401」というやつ。

この度ロームは、運命の人と衝突することを事前に感知するセンサ「UNMEI-040­1」を開発しました。近年、車の衝突を防ぐセンシング技術の進歩が話題ですが、ロームはあえて「運命の人に­ぶつかり、始まる恋」を応援します。

このペラい感じがなんともいい味です。

というわけで今年もいろんな会社の力作を愉しませてもらったが、正直いうと微妙なものもなかったわけではない。たしかに気合は入っているんだけど、どこかで自社のイメージアップという目的意識が垣間見えてしまったり。こういうのはとことんバカバカしくなくては。もう少しぶっ飛んでもいいのじゃないかしら。

製作の多くは外注しているのかもしれないが、社内にネタを考える担当者がいたりするとおもしろいだろうとおもう。もしぼくがそういう立場になったら毎日愉しいだろうなあ(しんどくもあろうが)。

でも、そのうち社内ではアイディアが枯渇し、マンネリ化するということもあるかもしれない。だからといって既存の代理店に丸投げしても、法外な費用をふっかけられたあげく、どこかのネタの使い回しでお茶を濁されるのが関の山だろう。

ならばいっそ、エイプリルフール専門のクリエイティブ事務所みたいなのを立ち上げるのはどうだろうか。昔『本の雑誌』の目黒考二氏が、日がな一日ただただ本を読むのが仕事という職場のお話を書いていたけど、ちょうどそんな感じである。各企業からエイプリルフール・ネタを請け負い、一年かけて仕込むのだ。むろんほかの仕事は一切しない。

なんとか食べてゆけるくらいの需要はあるのではないかしら。そうでもないか。続く。