ヨーロッパに原発PR施設を見にゆく 1/2

ヨーロッパを三週間ほどうろうろしてきた。主として原発PR施設を見るためだ。そのいくつかを駆け足かつ順不同でご紹介したい。

日本にあるような電力事業者が宣伝と説得のために設置しているものだけでなく、建設されながら稼働することなく別の用途に転用されたものもあった。これらがとても興味深かった。

これはウィーン郊外にあるツヴェンテンドルフの元発電所。週に一回見学ツアーがひらかれている。ウィーンから鉄道・バス・徒歩で出かけていき、マイケル・ムーア的に押しかけみたいにして参加させてもらった。

見学するのは、よくあるような模型ではなく、実物である。実物を見学できるところは世界でもほかにあまり例がないのではないか。それゆえ本当にいろんなことを考えさせられた。写真は、制御棒を出し入れする装置(だったとおもう)を下から見上げているところ。

ツヴェンテンドルフ原発はオーストリア最初の原発として建設されたが、国民投票によって原発廃止が決まり、1978年に一度も稼働することなく廃止された。チェルノブイリ事故よりも前、そして隣国ドイツよりもずっと早くに脱原発を実現している。いろいろ話をうかがったところによると、いまオーストリアでは水力や風力などで電力を十分まかなえており、発電コストもドイツより安価だという。

日本の政治家なんかもよく視察に来るのだといって、名刺を何枚か見せてくれた。かれらがなんて言っていたのか訊ねたら、「なんにも言わないよ、なにも理解していないんじゃないか」。

もうひとつはドイツ北西部、オランダ国境にちかいライン川沿いにあるウンダーランド・カルカー。ここは、いま廃止が決まりそうになっている日本の「もんじゅ」と同じく高速増殖炉の原発として建設されたが、やはり稼働することなく廃止されたところ。いまは滞在型の遊園地になっている。

上の写真で、背後にあるグレーの四角い建物の奥のほうに原子炉が設置される予定だったようだ。

冷却塔のなかにバーチカル・スウィングのアトラクションが設置されていた。なかなかに人気で、何度もくりかえして乗る子どももいた。

平穏とも奇妙とも不思議ともいえるようなこうした光景を見ていると、『アトラクションの日常』や『ディズニーランド化する社会で希望はいかに語りうるか』を書いた人間として、やっぱりこの問題は書かなければならない主題なのだなとあらためておもわされた。

その2へつづく。