アナーバーで『君の名は。』を観る

ぼくはいま米国ミシガン州の大学街アナーバーにいる。到着して一週間とちょっと経った。昨日はちょうど北米でも公開されたばかりの『君の名は。』を観てきた。

日本のアニメが好きだというミシガン大学の学生の集まり(日本ふうにいえばサークルみたいなものなのかな?)に “Animania” というグループがあり、そこからアナウンスが流れてきた。それでアナーバーでも観られるのだと知った。

正確にいえば、映画館があるのはアナーバーの隣町イプシランティである。Ypsilanti と綴る。ふしぎな地名である。

ぼくは大学から6番のバスに乗っていった。いってみたら、案の定、車なしで来るような場所ではなかった。まっ平らなところに広大な駐車場と、お餅を上からたたきつけたみたいに横にひろがった建物があった。

映画館のつくりは、日本のシネコンと一緒である。というか、米国のシネコンの方式を移植したのだから、当然の話である。観客の入りはぼくの予想以上だった(7割くらい)。多くはいわゆるオタク系のひとびとであり、上述のAnimaniaのメンバーらしきグループが中央に陣取っていた(ぼくはとくに話しかけたりしなかったのだが)。なかには、少なくとも外見を見るかぎり、あまりそういうことに縁のなさそうなひとたち(C&Wが好きそうな年配の白人夫婦など)も混じっていたりした。

吹替版もやっているが、もちろん日本語オリジナル(=英語字幕版)で観る。東京でもすでに二度観ている。何度観ても、よいものはよい。ひとつひとつの要素はけっして目新しくもなんともないのだが。そんなわけで、今回は台詞がどんな英語字幕に訳されているかをちょっと意識しながら観ていた。”Boobs” なんて言葉、初めて知った。

米国で観ると日本のそれとはだいぶ違ったのかというと、そういうことはとくになかった。もちろん観客たちの反応は日本のそれに比べればわかりやすいのだけど、まるっきり違う何かがあったという印象はなかった。前半はコメディタッチの部分によく反応していたが、後半になるにつれて物語の展開に引き込まれてゆく。その度合いがちがうだけで、ポイントは日本の観客とそう変わらないようにおもわれた。

たぶんもう「日本」だからどう、みたいなことを過度に騒ぐような時代ではないのではないか。良くも悪くも。「クールジャパン」などという官製プロモーションが根本的にずれているゆえんである。

終わったら午後9時すぎ。緯度が高いとはいえ、もう真っ暗だった。終バスを2本乗り継いで帰った。車が往来するばかりで人通りは皆無である。明かりというものの所在も限られている。ショッピングモールにしかない。乗り継ぎの待ち時間のあいだ、バス停に突っ立っているのはさすがにちょっと怖かった。