ミシガンの森でオリエンテーリング

友人に誘われてオリエンテーリングにいってきた。英語だと orienteering なので、日本語ふうに発音してもまったく通じない。

朝、外を見ると雨。どうするの?とメールを送ると、雨天決行という。車で迎えに来てもらって、そのまま会場まで行った。アナーバーからI-94(州間高速道路)を西へ20マイル(約34km)ほど走ってチェルシーで降り、そこからさらに7-8マイル北へゆく。森や湖が点在していて、レクリエーションエリアになっている。そのなかのリンドン公園(Park Lyndon)が本日の会場だった。

雨だというのに駐車場から車があふれる程度の参加者がいた。といってもたぶん30-40人くらい。主催は地元のオリエンテーリング・クラブで、友人は会員らしい。アメリカではオリエンテーリングはさかんなのかと訊くと、さにあらず、超マイナー競技なのだそうだ。オリエンテーリングなんてぼくも小学生以来だが、そもそも一度でも経験があること自体がすばらしい、と友人はいう。シーズンは春と秋で、冬は雪のため、夏は下草と虫が多いためにおこなわれないとのこと。

受付をして、ひとり$10の参加料を支払うと、地図をくれる。カラープリンタで印刷した簡素なもので、ジップロックのビニール袋に入れられていた。受付がおかれていた四阿には、石造りの暖炉が設置してあり、オリエンテーリング終了後に立ち寄ったときには火が入っていた。

あわせて、チェックポイントでチェックするための電子キーみたいなのも借り受ける。各チェックポイントに設置してある装置にこのキーを差し込むと、チェックしたことがわかる、というしくみのようである。最初に受けつけてチェックインしておく必要があるみたいだった。

このキーは指にはめられるようになっている。グローブの上から人差し指にはめる。友人がコンパスも貸してくれた。これも指にはめられるようになっている。

ぼくは登山用のゴアのカッパをはおい、左手にやはりゴアのグローブをはめたくらいで、あとは靴も含めて普段着だが、友人はきっちりオリエンテーション用の出で立ちである。専用の靴(靴底にスパイクが打ってある=写真)を履き、膝から下にゲイター(スパッツ)を巻いている。

スタートは正午。ぜんぶで12のチェックポストがあり、1500までにそのすべてにチェックする必要がある。決められた順番どおりにチェックしなければならない。

ぼくたちが歩き始めたのは、たぶん1220ごろだった。しばらくはトレイルを歩くが、すぐに右に折れて、森のなかに入る。ポストはすべて、トレイルからはずれたところに設置されているからだ。

森のなかは、すでにこの季節、木々の葉もおおかた落ち、下草もあんまりないので歩きやすい。ただときどきバラ科の植物がシュートを伸ばしているの行き当たると、引っかかったり、しばしば痛かったりした。ぼくも一二度とげがグローブをしていない右手に刺さっていたかった。

やってゆくうちにわかったのは、ポストはたいていは窪地とか小さな谷間とかにあって、遠くからは見えないようにおかれているということだった。オリエンテーリングはコンパスをつかった地図の読解能力を競うわけだから、当然かもしれない。

1番のポストはわりにすぐ見つかった。2番のポストまで、トレイルを歩くと遠回りになるので森のなかを突っきってゆく。まもなくポストを見つけたが、それは8番。2番はその先にあるはずだったが、なかなか見つからず。いったん8番まで戻って位置を確認してもう一度歩き、見つける。

3番はわりにすぐに見つかった。そこから一山越えて湖畔までおりてゆくと、4番があった。つぎは湖を右手に見ながら湖畔ぞいをぐるっとまわる。あとから来たカップルが走りながらぼくたちを追い越していった。

5番は湖畔から少しあがった丘の上にあった。つぎもまた湖畔をぐるっとまわって6番へ向かってゆく。いったん尾根にでると、そこは古いトレイルが走っていた。最近はあまりつかわれていないようでやや荒れていたが、直線につくられている。それが終わるところから右手の森に入り、湖を右手にみながら歩いてゆく。

湖畔近くの湖面は凍っていた。気温は華氏30度(摂氏でいえば氷点下)。落ち葉が、ゼリーのなかのサクランボのように氷中に閉じ込められていた。

しばらく黙々と歩く。6番はなかなか見つからない。そのうち向こうから老夫婦がやってきた。かれらも6番を探しているが見つからないので向こうを探してみるという。

友人が「どうする?」と訊く。現在位置を確認する。このあたりに6番があってもよさそうなのだが、まわりの風景をみると地図と少し食いちがっているようにもおもわれた。もう少し探すことにしてみたものの、しばらく進むと明らかに地図と異なる地形に遭遇したので、引き返すことにした。

その途中でポストを見つけた。だがそれは、さっきチェックした5番だった。いつのまにか池のまわりを一周してしまったのだった。地図上では一周できないような地形に描かれていたが、じっさいには陸地化がすすんでいたので、歩けてしまった、ということのようだった。

逆にいえば、ここから6番まではショートカット的に歩いて行けることが判明したことにもなる。いま来た道を戻って6番を探す。ようやく発見して、チェックイン。

そのあとまた湖畔沿いをぐるっとまわる。7番はトレイルぞいにあるようだったが、実際には少し入った小さな谷間にあった。最初に入った谷にはなく、もうひとつの谷が手前にあるようだったのでそれを探すが、谷らしきものが見当たらず、しばらく探し回る。さっきの老夫婦もやってきた。地図をよく見ると、このトレイルが湖に接するあたりよりわずかに先を左に入るような書き方だった。そこで、それらしきあたりで少し奥を見ると、小さな谷らしきものが見えた。そして、そこにチェックポイントを示すオレンジと白の旗がぶらさがっているのを見つけた。チェックイン。

つぎは8番。8番は最初に二度とおっているから、そんなに迷わない。少し歩いて戻り、トレイルから左に入った谷間で8番にチェックイン。この時点ではなんとなく8番で終わりのような気がしていたが、そうではなく、12番まであるのだった。

つぎの9番はトレイルの右側の崖の下にあった。チェックイン。つぎは10番。広場のようなところを抜けてしばらくいった先、左手のトレイル直下の谷間にあった。しかし、ここにチェックインする直前に1500となり、時間切れとなった。コンプリートはならず。残念。

本部へ戻る。いつのまにか雨はけっこうな降りになっていた。頭の上から靴の先までずぶ濡れである。受付のカウンターで、キーをfinishの機械に差し込む。するとレシートみたいなものが印刷される。ここに各チェックポイントでチェックした時間が印刷されるようだった。地図は持って帰ってよしとのこと。バナナやクッキーがおいてあったので、少しもらう。飲み物はお湯。でもおいしかった。

帰路は途中でチェルシーの街の、なかなか良い雰囲気のカフェに寄り、コーヒーとココナッツマカロンのおやつをたべてから帰った。

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