『キツツキと雨』を観てきた。抜群によかった。
『南極料理人』の沖田修一監督の新作。前作は映画館で二度観、DVDは予約して買い何度も観た。これからも観るだろう。『キツツキと雨』は楽しみに待っていた次回作だ。
脚本はオリジナル。監督がじぶんで書いている(共同脚本)。設定や粗筋をみると、映画による映画賛歌ととれなくもなく、そう見るならばありきたりで、過去の作品たちがしばしばそうであったように自家中毒をおこしかねないようなものだ。本作にその気が皆無というわけではないが、しかしそこへ落っこちてしまうことなく、むしろそうした要素からうまくジャンプして、変な嫌みのない、気持ちのいい作品に仕上げられている。
沖田作品からは、当たり前の世界のなかにどんなおもしろさが見出せるかということに、正面から心底向きあっているのだなという印象を強くうける。その姿勢がすばらしい。それが結果として、映画らしい映画をつくりあげる土台になっているだろう。
不勉強で申しわけないのだが、沖田監督の作品は、かれの商業映画デビュー以後のものしか観ていない。その限りでいえば、いい脚本が書けるし、いいショットがとれるし、編集も音楽の入れ方もいい。間やタイミングの感覚もすぐれている。そして、いい意味で安定している。もし「安住」や「安心」をしたのであれば、けっしてそうはいかなかっただろう。
沖田監督の今後を、これまで以上に、とても楽しみにしている。
さて余談をふたつ。
その1:
役所広司はこのところ、山本五十六から樵まで、忙しいことである。お箸の持ち方が変だったが、あれも演技だったのだろうか。
その2:
みつまめ(?)をもってくるお店のおばちゃんの台詞まわしがよかった。本場の名古屋弁だがね、という感じ(設定としては旧明知線ぞいなので岐阜になるわけだが)。