エッセイ

ゼミ・授業

枯れる

突然声が枯れた。理由はよくわからない。喉が痛いという症状もほとんどなく、ほかに体調に問題はないので、例の豚インフルエンザというわけでもなさそうだ(学生の一部ではこの言葉を「トンフル」と略すらしい)。授業やゼミでしゃべらないわけにいかない。枯...
ゼミ・授業

失せもの

運転免許証を紛失した。いかに粗忽者であるとはいえ、その種の失態はわりにしないタイプの人間である。めずらしいことだ。 盗まれたのではなく、明らかに落とした。場所は不明。朝うちを出てから晩までのあいだにどこかで落とした、という以上のことは...
わからない風景

突破者

筍である。 ついさっき、アスファルトを突き破って地上に姿をあらわしたばかり、なのだろうか。飛び散った瀝青片がなまなましい。散歩の途中に発見した。もっとも、ぼくが気づいたときには、筍の本体というか中身はすでになく、皮のみがその痕...
空と雲と光

ハーフムーン

5月2日午後7時すぎの月。きれいな半月だ。ちょうどほぼ南中していた。三脚もたてず、手持ちで撮影した。 《くんくん》は、なぜお月さまはああいう形なのかと問う。月と地球と太陽の位置の関係でね、と説明するが、腑に落ちないみたいだ。じ...
エッセイ

パスポートの写真

豚インフルエンザでパンデミックかと騒がしい最中、十年ぶりにパスポートを更新した。前のやつの期限を忘れていてうっかり失効させてしまったので、実質取り直しである。 前は何やら山ほど書類が必要だったが、最近はようすがちがう。戸籍と失効したパ...
自然の風景

桜と海棠

近くの公園はこのあたり限定の桜の名所である。「桜まつり」と称してもう二週も前の週末からイベントをやっている。 だが、開花宣言のあとに冷え込んだため、なかなか花が咲かず、気勢のあがらないまま、ちょっと間の抜けた空白がつづいていた...
エッセイ

伏姫桜

3月も早くも終わり。ちょこちょこ用事があったものの、合間をみてせっせと仕事をしてすごした。前から書かねばとおもながら、むずかしくて書きあぐねていた論文を、上旬に『アトラクションの日常』を脱稿した余勢をかって書きあげた。ちょうど50枚...
ゼミ・授業

林檎顔

卒業旅行に行った学生のお土産としてもらった。メキシコで見つけたのだそうだ。用途は不明。研究室に飾っておくようにと厳命されているので、そうします。
ゼミ・授業

卒業式

昨日は卒業式だった。ぽかぽか陽気につつまれた穏やかな一日だった。 今年の卒業生の多くは、ぼくが明学にやってきたときにちょうど2年生になった学年だ。カリキュラムの都合上かれらは芸術メディア系列の選択ができないので、卒論指導を直接担当した...
エッセイ

遠来の客人

雨降りの夕方、《あ》によばれて庭に出た。林檎の木の根元、ローズマリーの葉の陰に、雨粒を避けるようにして、小鳥がうずくまっていた。全体が茶色で、おなかのあたりに白っぽい斑が入っている。小鳥は卵をかかえているみたいな恰好でじっとして、目だけくり...
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