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ランクル

ディフェンダー「ひるね号」

 ▲ディフェンダーひるね号(九十九里・木戸浜)

納車からひと月半が経過したランドローバー・ディフェンダー。この間の走行距離は約1400kmだ。一度名古屋へ往復したので距離は伸びたものの、まだまだ慣熟とはいいがたい。インプレッションというほど大したものではないが、ぼくなりの印象を簡単にメモしておきたい。

ディフェンダーのボディには幾種類かあるが、ぼくのは110のステーションワゴン。並行輸入車である。初度登録は2004年だが、製造は2002年のソリハル工場。できあがってから2年間、英国で昼寝していたらしい。だから「ひるね号」と名づけた。

300Tdiといって、伝統的なランドローバー製ディーゼルエンジンを積んでいる。ボディの色はチャウトンホワイト(ソリッド)。ディフェンダーは国連の平和維持活動でもつかわれているらしいのだが、外観はほぼそのまま。ひるね号の横腹やボンネットに「UN」と大書すれば見分けがつかないだろう。

最初にお店で見たときにはボンネット上に予備のタイヤを載せられるようマウントがついていた。このタイプは新車時から装着されているらしいのだが、錆びるし不要なので、ボンネットごと交換してもらった。さらにオーバーフェンダーが黒色だったところをボディと同色に塗り直してもらった。

5速マニュアル、ディーゼル、電子制御皆無といったスペックは、完全に時代に逆行している。というか、もともとディフェンダーは、1948年以来基本構造が変わっていないというシーラカンス的な車らしい。ラダーフレームにコイルリジッド、ボディはアルミ。足回りやエンジン・ミッションなど自動車としての根幹部分はたいへん頑丈にできているが、いわゆる快適装備系はほとんどない。思いつくまま、ざっと挙げてみよう。

  • エアコンなし(後付つり下げ式クーラーのみ。ヒーターは別にあり)
  • シートはビニール(リクライニング機能なし)
  • パワーウインドなし(手回しハンドルだが、ときどき外れてしまう)
  • 集中ドアロックなし(後付してもらった)
  • ラジオはEU仕様のため日本で使えず(国産のものに交換)
  • ヘッドライトの回路にリレーなし(ヘッドライトごとHIDに交換、リレーも追加)
  • ABSやエアバッグなどの安全装備なし(いっそうの安全運転を心がけるほかなし)
  • すきま風と雨漏りが「標準装備」

ようするに、いまどきの国産車では考えられないような造りなのである。

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さらばランクル(3/3)

 ▲歌島高原(北海道島牧村)

新しく買うディフェンダーの納車が近づいたある日、ぼくはランクルに乗って近所をひとまわりし、帰りに洗車場に立ち寄って、きれいに洗ってやった。帰宅して車内に掃除機をかけ、ぼくが持ち込んでいた装備品をとりはずした。大きな段ボールを用意したにもかかわらず、とりはずした装備品は意外なほど少なかった。

 ▲島牧ユースにて(北海道島牧村)

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さらばランクル(2/3)

 ▲羅須地人協会の駐車場にて(岩手県)

家族でもっとも遠くまで出かけたのは、2年前の春に花巻へ出かけたときだろうか。このときは、長者原SAで仮眠し、朝目がさめたら、前の右タイヤがパンクしていた。さいわいSAのガソリンスタンドが開店していたので、そこで修理してもらった。その年の秋、こんどは北海道のニセコで、後ろの左タイヤがパンクした。このときもすぐにタイヤ屋さんが見つかって修理してもらった。市川に戻ってからデューラーのATに交換した。まあ、あんまりMTという柄ではない。

 ▲函館山麓の最奥(北海道)

単独行では毎年9月の北海道行きがランクルとの長旅だった。勘定してみると5回になる。初めのうちはおとなしく高速をつかって走っていったのだが、やがてさまざまなルートをたどるようになった。

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さらばランクル(1/3)

ランクル80がわが家に来たのは2003年12月の初めだった。初度登録は1995年だから、その時点ですでに8年落ちだった。

その前に乗っていたステップワゴンは、わずか18カ月で手放すことにした。一度手に入れたものは長くつかうタイプの人間として、これは異例のことであった。

理由はキャンピングトレーラーだ。当時トレーラーを買うつもりでいて、そのトラクターとして力不足が否めなかったからだ。ステッピーは気さくで、ホンダ車らしくよくまわるエンジンがたのしかった。だが逆にいえば、まわさないと走らないという性質でもあった。トルクが細いため一家フル乗車時には苦しい。車体剛性も足らなかった。走っていると、ときおり車体がよじれるような感覚があった。

好みからいけばランクル70ディーゼルあたりがよかったのだが、すでに排ガス規制が始まっており、市川は規制区域内だから選択肢に入れられない。100系は中古でも高価すぎたし、あのセルシオ的ラグジュアリー路線が性に合わないのとで見送った。そこで、価格的にもこなれていた(それでもぼくにとっては十分高価ではあったのだが)ランクル80に絞ることにした。

四駆好きだが、オフをやるわけではない。ナッジバーやインチアップなどのいかにもRV的な装備は不要、背面タイヤもなくてよく、できるだけノーマルに近い禁煙車。そんな条件のもと、あれこれと探しまわって何台か試乗し、最後に出かけていった光が丘の東京トヨタ中古車店で、出会った。

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ランクル売却でかいま見る中古車買取の世界(2/2)

けれども、これで一軒落着とはいかないところが中古車買取の世界である。

利用者の側からみて、中古車買取の世界を不透明にしているもうひとつの要因は、二重査定(再査定)である。買い取ったあと重大な瑕疵が見つかったばあいに減額が発生することである。つまり出張査定時に提示された買取価格が減額されてしまうばあいがある、ということだ。本来は瑕疵担保責任の一種であり、そのかぎりにおいては一般的にみてそれなりに妥当な条項だといってもいいかもしれない。

ただし大きな問題がある。それは、そのばあいの減額の金額を買取店が一方的に決定できるという意味の文言が契約書に書かれているケースがあることだ。

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ランクル売却でかいま見る中古車買取の世界(1/2)

このところバタバタと忙しい。その一因は、ディフェンダーを購入するため、ランクルを手放すことにしたためでもある。愛機ランクル80(ハチマル)の思い出については別稿を期す。ここでは今回かいま見た中古車買取という、いわく言いがたい鈍色の世界の一端について書き記しておきたい。

新しく買うことにしたディフェンダーは、現在ランドローバーのディーラーでは扱っておらず、並行輸入車(の中古)である。だから今回は、よくあるディーラーでの下取りという方法は最初から選択肢に入らない。買取店に査定してもらうのがよかろうということで、カーセンサーの一括査定というのに申し込んだ。数社まとめて査定してもらえるのだという。クリックした瞬間に、さっそく電話がかかってきた。できるだけメールで連絡してほしいと注記しておいたはずなのだけれど。

ふつうなら値がつかないような年式なのだが、そこはランクル、つぎつぎと出張査定をさせてほしいと連絡が入り、その数11社におよんだ。いくつかだけ選んでお願いするのも変だし、見積もりをとるのは多いほうがよかろうと、時間を調整して、すべての買取店に現車を見てもらった。

研究批評物書き稼業という商売柄、事前にあれこれ調べないと気がすまない性分である。中古車査定にかんしては、調べれば調べるほど、なんともややこしい話が累々と見つかる(むろん事実もあれば風聞もあるだろうが)。査定に来るひとにもいろいろあるようだ。やや重たい気持ちで、事をすすめる。

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マニュアル

とうとう決心。愛機ランクル80を手放し、買い替えることにした。

新しいのは登録から6年落ちの中古である(なんか矛盾した表現だが)。ただいま整備してもらっている最中で、手許にやってくるのはしばらく先になりそうだ。

さしあたり、マニュアルとパーツカタログを先行して入手した。こういうものが世に出まわっているというのは、日本の一般的なユーザーが想定しているような車ではないということかもしれない。じっさい、ハイブリッドやら電気自動車やらといった昨今の流行とはほぼ真逆の選択なのだ。


海を見にゆく

海を見にいってきた。

べつにカッコいいような話ではない。《くんくん》と二人でランクルを2時間ばかり走らせて到着。大洗である。駐車場の目の前に太平洋がひろがる。湘南あたりとは違い、それなりに外海らしい本気の波が打ち寄せている。

《くんくん》は当然のようにして、靴と靴下、それに上にはおっていたシャツを脱いでぼくに預け、ズボンの裾をまくりあげて波打ち際にくりだしていった。

打ち寄せる波に足を濡らされないようにして、波と押しくらまんじゅうをするようにする。見ていると、波はまるで呼吸をしているみたいだ。テンポは変わらず規則正しく打ち寄せる。けれども砂浜につくる波や泡のパターンは毎回少しずつ異なっている。

時折、勢いよくざぶーんと大きな波がやってくる。波はぼくが腰をかけている階段状の堤防の下まで迫る。くんくんはきゃあと声をあげて波を避けようとするが、むろん逃げきることなどできず、けっきょく波をかぶっている。気づけばズボンの裾のみならず、Tシャツまでぐしょぐしょ。案の定、というべきか。

こうなると、あとはもう濡れるのもかまわず、波と戯れている。まわりには同じような子どもたちが何人もいる。みんな、ずぶ濡れ。でも、やたら愉しそうである。

陽がだいぶ傾いてきた。さて、どうしたものか……。着替えなど持ってきていないぞ。タオルが一枚あるだけ。

濡れたTシャツとズボンを脱がせてビニール袋に入れる。上には、さきほど脱いでおいたシャツ一枚を着せる。下は、仕方がないのでぼくのはおっていたシャツを、巻きスカートみたいに巻いておく。シートの上にタオルを敷き、そのうえに坐らせる。

そんな恰好でも本人はすっかりご機嫌で、鹿島から東関東道・湾岸と走って市川までの帰途のあいだ、何やらおしゃべりを続けていた。

《くんくん》ももう小学三年生。あと数年のうちに、もう両親と一緒に出かけるようなことはなくなり、かれ自身の世界をつくりはじめることだろう。


濁流化する日本

渡道の途中、新潟・山形・秋田・青森の各県をとおってきた。それぞれの県境は林道を越えてきた。

青森で大雨に遭遇した。河川が濁流化している。真っ茶色の水の塊があとからあとから猛烈に押し寄せてくる。いまにも堤防から溢れだしそうな勢いだ。特定の川だけではない。どの川もどの川も、そうなのだ。

濁流は河口まで流れくだり海に注がれる。そのせいなのか、海もまた海岸に沿って帯状に、茶色に染まっていた。

もしかしたら、雨が降るたびに川がこうなってしまうのだろうか。さすがに、そうではないだろう。豪雨のせいなのか、森の保水力が落ちているせいなのか、複合的な要因なのか、たまたま遭遇しただけでは判断のしようがない。

いずれにせよ、降りはじめて一日もたたないうちにこうまで濁流化してしまったわけだ。背筋の寒くなる光景だった。


死にざま一覧

しばらく前、梅雨のおしまいのころのことだ。大学院時代以来の友人のお父さまが亡くなった。80歳を越え、大往生だった。雨の日曜の夕方に、ランクルを走らせてお通夜にうかがった。大勢の参列者の末席につらなっていると、お坊さんがあらわれ、説教を始めた。

お坊さんは言う。「ひとはいずれ必ず死にます。死にはいくつかの種類がある」。一枚の厚紙をとりだし、あたかもワイドショーの人気司会者のような身ぶりで、それを参列者のほうへ向けた。そこには手書きで、ひとの死にざまがみごとに分類・一覧されていた。

「まず病死ですね。本日の仏さまはこれにあたるでしょう。つぎに事故死」といった調子で、話を続ける。「自死、みずから命を絶ってしまう、これはいけません。そして戦死。これはいまの日本ではあまりないかもしれませんな」

あとからよく思い直してみると、この死にざま一覧表はあくまで話の枕にすぎなかった。本題のほうは、お通夜という儀式はむしろ参列しているわたしたちが残された時間をどう生きるかということを考えなおすためにあるのだ、という、じつにまっとう、かつ実のある説教だったのだ。それに、死にざま一覧表がテレビ番組みたいなフリップで示されるというのも、その友人がテレビの研究をしていることを考えあわせると、まことに興味深い現象だったといわねばなるまい。しかしそのときは、ただただ呆気にとられているだけで、そのうちお経が始まってしまった。

お焼香のあと、座敷に坐っていた。まわりは故人と一緒に踊りを習っていたという妙齢の女性たち。元気である。友人が挨拶にやってきた。これまでいろいろ大変だったろうに、そんなことは一切表に出さず、ただ笑って「来てくれてありがとう」をくりかえしていた。

しばらくして、ぼくたちは席を辞し、再び雨のなかランクルで帰途についた。


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