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市川

雪降る

12月25日のクリスマス、市川に雪が降った。

午後3時くらいだっただろうか。ペンキ塗りをしていて気がつくと、空が黒雲で覆われていた。ほどなく雨粒が落ちてきた。と思う間もなく、雪になった。

雪といっても、むしろ霰というのに近いかもしれなかった。いくつかの結晶が途中で少し溶けてくっついたような格好をしていた。それがバタバタと舞い降りてくるのだった。

とても積もるというようすではなかった。じっさい、20分ほどで雪は雨に戻り、さらに20分ほどしたら、あがってしまった。

黒雲は西の空の下のあたりでくっきりと切れており、沈みかかった夕陽が空をオレンジ色に染めているのが見えた。


旧江戸川ポタリング

旧江戸川ぞいをBD-1で走ってみた。

市川から江戸川左岸(千葉側)ぞいに南下して行徳橋をわたり、少し戻って旧江戸川ぞいの右岸(東京側)を走る。造船所や釣りの船宿、工場などの横を走っていく。

写真は新中川との合流地点から南の河口方面をのぞむ。手前が新中川、左から奧にかけて旧江戸川。奧の川中にうっすら島が見える。妙見島だ。パリのシテ島みたいなものだが、こちらの島は工場だらけである。

道を間違えた。脇にあった駐車場に、忠魂碑がたっているのを見つけた。出征して戦死した兵士の名と、建立者として父の名が刻まれている。明治30年と記されているのが、戦死の年なのか建立年なのかは見落とした。碑の前には、自販機が鎮座していた。

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今日の江戸川

台風12号の影響で和歌山や岡山では猛烈な降雨で大変な被害がでているという。市川では、風はそれなりに強く吹くし、蒸し暑いが、雨はそれほどでもない。

江戸川土手に行ってみた。かなり増水していた。いつもは野球やサッカーの練習につかわれている河川敷のグラウンドは、すっかり水没している。

帰りに通りかかったお寺では、屋根の棟が崩れていた。台風ではなく震災の影響であろう。本堂が倒壊する危険があるので近づかないように、という旨の貼り紙がしてあった。


驟雨

さる出版社の方が、わざわざ市川まで打合せに来てくださった。

執筆の話やら悪巧みの相談やら、二時間ほど愉しく話をした。これから都内へ戻られるという編集の方を見送ったあと、書店に寄ってから外へ出た。雲行きが怪しい。

歩いて帰るつもりだったが、バスに乗ることにした。

つぎのバス停で降車、というところで、路面に黒い滲みがひろがりはじめた。ポツ、ポツ、ダダダ……というテンポで、滲みの数は一気に増えてゆく。あいにく傘はもってきていない。

バスから降りた。大粒の雨が矢のように降り注いでいる。そのなかを小走りに抜けた。並木まで来ると、雨脚は弱くなった。その隙に自宅まで急いだ。頭上で一度、雷鳴が轟いた。

うちに駆け込み、すぐに濡れたシャツを脱いだ。朝、干してあった洗濯物は、半分乾いたところで、また濡れてしまっていた。

こんなふうに雨に濡れるのは、いつ以来だろう。以前であれば、こうした予期せぬ出来事に遭遇するのはけっして嫌いではなかった。

しかし、首都圏もまた放射能に汚染されているらしい今日では、もはや驟雨に濡れるというシチュエーションを愉しむような余地はあまり残されていないのだった。


金町浄水場放射性ヨウ素報道にかんする千葉県水道局の発表はなぜ不信感を招くのか

やはり来たか。

23日。金町浄水場から乳児が飲む水道水の暫定規制値の2倍を越える放射性ヨウ素131が検出されたことが報じられた。

福島原発から放射性物質が漏れ出、各地に飛散していると見る以上、その影響は広範囲で確認されるはずだ。すでに北関東を中心に葉物野菜、海水、土壌などで同様の報告があいつでいる。水道水だけ例外でありつづけるとは素人目にも考えにくい。遠からずこういう報告に遭遇せざるをえないだろうとおもっていた。

金町から江戸川をわたれば、すぐに千葉県市川市である。千葉県水道局は、いまのところ同様の数値は検出されていないといっている。いや、正確には、そうしたことはなんら明言していないのだが、読んだ者にはそのような印象を与えるような文面でもって発表されたことが、直接に発表文書にあたるとわかる。

けっして言質を取られることなく特定の印象を与えること。その意味で、これはこの手のお役所が市民県民国民向けに発する情報の典型といえるような文面である。当該文書を、同局サイト(上のリンク先)から、日付・発信者を含めて、発表文面の全文を引用しておく(「参考」と註記されている各浄水場の測定結果表その他は省略した)。

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卒業おめでとう(2/2)

夕方からは、卒業生の主催による謝恩会が、けっきょく予定どおりにひらかれることになった。

このような状況下では自粛すべきではないかという意見もあったかもしれない。じっさい実行委員の学生たちも中止するかどうかずいぶん悩んだのだそうだ。最終的に実施と決めたかれらの決定が、外部からみて正しいといえるのかどうか、ぼくにはわからない。だが、かれらはすでに、かれら自身にはなんら責任のないところで、公式に卒業を祝ってもらう機会を奪われている。かれらが、もろもろ考えた末それでも謝恩会を開きたいと決めたのなら、それを支持してあげたいとおもった。謝恩会には、ぼくたち教員は卒業生に招待される恰好になっている。先生方はみな参加されていた。やはり卒業生たちの気持ちを汲もうと考えられたのだろう。

夕方から予測不能な大規模停電がおこるかもしれないと経産省が警告を発するなか、会場へ向かった。街をゆくひとや車の数は、心なしか少ない。

会場は大学からさほど離れていない場所にあった。一歩足を踏み入れると、そこには『千と千尋の神隠し』の湯屋みたいな巨大な空間がひろがっていた。パリのグランパレもかくやといわんばかりのガラスの大屋根の下に、茅葺きの屋根の家並みが再現されている。池があり、橋がかかり、植え込みがしつらえられている。桜の飾りつけが華やかだ。

ゴージャスである。けれども、雰囲気がどうも妙だ。節電のためだろう、照明が落とされている。そして、ほとんど人影がなく、しーんとしている。たんに閑散としてさびしいというのではない。あるべきはずの人影が不在という、喪失感に似た感覚である。

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卒業おめでとう(1/2)

3月17日。被災地では救援や支援が、福島原発では危機回避への決死の努力が、首都圏では計画停電が続けられているなか、お天気だけみれば市川はおだやかに晴れ、絶好の卒業式日和となった。

午前中は《なな》の卒業式で小学校へ。《なな》はタイを締めてぼくのブレザーをはおり、いちおう神妙な顔をして入場してきた。式は、外界の渾沌に抗うかのように、ごくごく平静に進んでいった。6年生がひとりずつ名前をよばれると「はい!」と元気よく返事をして壇上にあがり、校長先生から卒業証書を押しいただく。別れの言葉には合唱が折り込まれていた。卒業生、在校生(5年生)、そして両者とで、計3曲がうたわれた。

卒業生たちが体育館から退場した直後にぼくは式を辞さなければならなかったが、《あ》によれば、在校生たちのつくる花道で盛大に見送られたり、いくつも花束をもらったりして、送られるほうも送るほうも、みんなにこにこ笑っていたのだそうだ。湿っぽさ皆無の、晴れやかな卒業式だった。

そのまま白金に向かう。明学も今日の午前に卒業式の予定だった。だが前日夕方になって急遽中止という連絡が入ってきた。連絡が遅くなったのは、多くの大学が卒業式を取りやめるなか、ぎりぎりまで可能性を追求していたためらしい。学位記(いわゆる卒業証書)だけは午後に学科ごとに、集まることのできた学生には授与する、ただし「式」ではありません、とのこと。この日に大学に来られない学生には、後日教務課で配布するのだという。

ゼミ生たちにもその旨連絡がいっていたはずである。ぼくもゼミのメーリングリストで、全般的な状況をよく見きわめるようにと注意を呼びかけてはいた。しかし卒業生たちのほうは「もうこうなったら絶対に学校に行ってやる」と心に決めていたらしい。

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地震

ぶじでしたか?

市川もずいぶん揺れました。本やら書類やらが散らかっていますが、まわりも含めて大きな被害なさそう。

こういうときには、すぐテレビをつけるものですね。津波の勢いと被害に、絶句。被害が最小でありますよう。

まだ、ときどき小さな揺れがきます。


笑っていいとも、泣いていいとも

小学校の卒業の迫った《なな》たちのクラスで「感謝の会」という催しがあった。「笑っていいとも!! 泣いてもいいとも!!」というキャッチコピーが付いている。ようするに、子どもたちによる演芸会である。保護者あての立派な「招待状」まで届いた。ちょっとのぞきに行くことにした。

会場は小劇場という部屋だ。階段状の桟敷席に座ると、正面に小さな舞台がある。ちゃんと緞帳までそなわっている。

演し物は、歌や手品、「一発芸」と称するテレビの芸人の物まねなど。入れ替わり立ち替わり子どもたちが現れては芸をして引っ込んでゆく。全員が出演するらしいが、なかには3度も登場した子もいた。式次第には各組の演目が註記されていたが、ぜんぶで13組のうち8組までが「お笑い」というのが、いかにも今様である。

《なな》たちも「お笑い」のうちのひとつ。先日YouTubeで《みの》にいくつかコントを見せてもらい、それらを適当に塩梅した、三人組の宝石泥棒のコントを演っていた。おもいのほかタイミングのとり方がよい。勉強そっちのけで、ずいぶん練習したみたいである。

演し物がひととおり終わると、全員で合唱。そのあと、子どもたちがひとりずつ立ちあがって、感謝の言葉を述べた。

ぼくは参加しなかったが、感謝の会に先だって、午前中から「太巻き寿司」づくりをし、お昼には給食と一緒にそれをいただいたのだという。

太巻きは2種類あって、ひとつは椿の花を描いた海苔巻き。

  ▲椿の花を描いた巻き寿司

もうひとつは、卵焼きを軸にして四つ割にした海苔巻きを合体させて、さらに海苔巻きにしたもの。「四海巻き」というのだそうだ。

  ▲こちらが四海巻き

どちらの太巻きも千葉の郷土料理なのだという。かなりのお手間いりである。

《なな》たちのクラスは仲がよく、みんな愉しそうだ。《なな》自身、いつもそう言っている。もちろん勉強も大事にちがいないのだが、小学校時代においていちばん大切なのは、けっきょく、そういう実感をもつことではないかと、あらためて感じさせられた。


雪の朝

市川にも雪が降った。

朝、《くんくん》がひとりで起き、着替えて出ていった。めずらしいこともあるものだとおもっていたら、すぐに戻ってきて、「雪ふってるよ!」といった。窓の外をみると、かなりの勢いで白いものが舞っている。いましがた降りはじめたばかりらしい。みるみる積もりはじめた。

《くんくん》は「雪の結晶をみる」といって、最初はてのひらに雪を受けとめていた。しかしそれでは体温ですぐに融けてしまう。

《あ》に黒い布きれをもらって、それをデッキにおいてみた。舞い降りてきた雪片がふわりと布に舞い降りる。目を近づける。「六角形!」と《くんくん》が叫んだ。

一時間もしないうちに西の空が明るくなり、青空がひろがった。積もった雪は、お昼までにほぼ消えてしまった。


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