地震から夏至まで(2)──遅れる

授業を始めて数分後、二人の男子学生が遅れて教室に入ってきた。アボット=コステロのような凸凹コンビである。

遅刻したらひとつ芸をしてもらうと申しわたしてあった。かれらにそのことを思い出してもらうと、うーんといってしばらく黙り込んだあと、「じゃあ、お題をください」という。即座に「夏至」と答える。ちょうどその話をしていたのだ。学生はにわかには理解しかねたみたいだったが、夏至の意味を説明してやると了解した。さらにあと二つお題を与えることにした。席についている学生から「風邪」と「ウーロン茶」の二つがあがった。三題噺で寸劇をしてもらうことにした。

「それじゃあ、夏至の日に風邪をひいた患者の役を」とコステロがいう。「このひとがやります」。指さされたアボットは、え、おれが? という顔をする。つづけてコステロがいう。「ぼくは、お医者さんの役」。

二人は寸劇を始めた。医者のコステロのところにアボットの患者がやってくる。夏至の日に腹をだして寝ていて風邪を引いた。薬をだすことにしたコステロは、アボットに念を押す。この薬は塩水で飲まないと効かないのだ。翌日、再びアボットがコステロのところにやってくる。発疹が出て、たいへんなことになっている。まちがってウーロン茶で薬を飲んでしまったのだ。コステロは薬を出し直す。こんどはちゃんと塩水で飲むんですよと、もう一度念を押す。

それだけの話で、オチもなんにもないのだが、これが案外おもしろかった。予想外の事態がおきたとき、どんなふうに対応できるかは、学校の成績だけでは単純に計れない。アボット=コステロの二人、なかなかよかったぞ。でも、調子にのって、つぎからわざと遅刻してきたりしないように。