伏姫桜

3月も早くも終わり。ちょこちょこ用事があったものの、合間をみてせっせと仕事をしてすごした。前から書かねばとおもながら、むずかしくて書きあぐねていた論文を、上旬に『アトラクションの日常』を脱稿した余勢をかって書きあげた。ちょうど50枚。完成したとたん、また腰が痛みだした。

先月のぎっくり腰とはちがい、いちおう立ったり歩いたりはできる。ただし腰が伸びないので直立できず、前かがみ気味の猿人的恰好で、よちよちと歩くしかない。でも歩けるだけましだ。そこで、原稿も終わったことだしとばかりに、映画を観に行ってきた。客観的にみれば最悪だが、当人としては健全な状態である。

駅へ向かう途中、お寺に立ち寄る。染井吉野はまだ4分咲きといったところだが、この枝垂れ桜はよく咲いていた。「伏姫桜」という。このあたりは里見八犬伝ゆかりの地で、そう名づけられたそうだ。樹齢400年。本当だとすれば、江戸幕府の始まったころに植えられたことになる。寺の裏の墓地を散歩していると、「元禄」あたりの年号の刻まれた墓石なら、ごろごろ見つかるのだが。