夏空と夕闇

日曜日の午後に《あ》と散歩した。強烈な陽射しにかんかんと照らされながら歩いた。

池のある公園へ行ってみた。ふだんはジョギングするひとやら子どもづれやらでにぎわっている。だが、まるで人影がなかった。住宅地のなかは無風で湿気に簀巻きにされるような感覚だった。谷沿いにでると、急に風が吹いてきた。適度に風さえ吹けば、陽射しが強くてもなんとかしのぐことができる。

坂道を上り下して、土手まで歩いた。鉄道の高架下の日陰をみつけた。ひと息ついた。

土手の上に出た。いつものように広い空があった。いかにも夏らしい空だった。夏のあいだに何度かは、こんな空を見ておきたい、とおもった。

翌日は雨が降り、雷が鳴った。その翌日はまた晴れた。暑さはすぐ戻ってきた。

夕陽が入道雲を朱に染めていた。街も染めていた。世界じゅうが朱色に染められたみたいだった。

朱に染められた街は、すみずみまでピントがあわせられているように見えた。遠くのものも、近くのものと同じようにくっきりしていた。見慣れた街並みであるはずなのに、照明に照らされたスタジオのセットを眺めているみたいな感覚だった。

こんな夕闇にも、やはり年に1-2度は出会ってきた気がする。

しかし写真を数枚撮っているほんの数分のうちに、その感覚は霧散した。あとには、いつもの夕焼けが残された。

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