1日は1000円で映画が見られるためか、この作品もかなりの人出だった。
作品としては全体に小粒で、それなりに見られるが、これといったストロング・ポイントも見あたらない。シンプルなつくりは好感がもてる反面、物語の話型がむき出しで、人物設定も平板ゆえに、単調な感は否めず。
綾瀬はるかの主人公が、根本的に調子のよいダメ人間であって、それが「社会」の主流から拒絶されてゆくところは、なかなかよい。それを通俗的に昇華(=消化)して描いてしまっているわけだが、ここがこの作品に深みと拡がりを与えられるかどうかの分かれ目だったのではないか。
舞台は1979年の北九州。町のたたずまい、走っているクルマ、中学生たちがかかえるマジソン・スクエア・ガーデン印のよれよれのバッグなど、ディテールは凝りまくりだ。それはそれで、悪いことではない。
ちなみにぼくは、作中の中学生たちの一学年下になるが、つぎつぎ流れる当時の流行歌に胸躍ったかというと、ちっともそうではなかった。見かけと異なり、ノスタルジアに涙するような性格の作品ではないからだろう。
個人的なことをいえば、ノスタルジアは、少なくともぼくの趣味ではない。あらゆるノスタルジアは、そもそも「懐かしさ」を喚起するよう事後において制作されるものなのだから。