よく歩く道の脇にある駐車場に、たまご色のフィアット500が停まっている。
最近は三代目をときどき見かけるが、これは二代目のチンクェチェントだ。動力性能はともかく、デザインとして完璧である。
クルマのことをよく知らないひとも、『ルパン三世カリオストロの城』でルパンたちが乗っていたクルマ、といえばわかるのではないか。知人にそう説明したら、以後彼女は「ルパンのクルマ」とよぶようになった。
大事に乗られているようだ。内装は今様にきれいにリペアされ、ボディも最近ペイントしなおされたとおもわれる。ただアンダーには錆で多少ガタが出ていた。1977年が最終発売年だから、少なくとも34年は経過しているはずだ。やむをえまい。
先日のある暑い昼下がり、いつものように通りかかったら、チンクェチェントの姿が見えなかった。出動中らしい。
他人事ながら、ちょっと心配になった。このクルマのエンジンは479cc、空冷である。暑い夏場の都内で渋滞に巻き込まれたら、たちまちエンストしてしまうだろう。
数時間後に再びとおったら、いつものようにちんまりと駐車場にたたずんでいた。
ディフェンダーもそうだが、コンピュータ時代以前のクルマやバイクは、生き物のような印象をあたえる。