マラッカ海峡を見にゆく 2 ──JBからマラッカへ

JBからマラッカへはバスで移動するのが一般的だという。ただし長距離バス用バスターミナルのラーキン・セントラル(Larkin Sentral)は郊外にある。まずはそこまでいかねばならない。

  ▲夜明け(といっても0630)のJBセントラル駅。ホテルの窓から。

ホテルのフロントで訊くと、シティスクエア前の通りからラーキン行きのバスに乗ればいいという。行ってみたが、そんなバスはおらず、そもそも林立するバス停のどこがラーキン行きかもわからない。

そこでJBセントラル駅を抜けて、東側のイミグレーションのあるほうへ行ってみた。シンガポールから国境を越えてくるバスは、二つのイミグレーションを抜けたあと、ラーキンまで走っていたはずだから、それに乗ればいいだろうと考えたわけだ。

イミグレーションの一階にもバスターミナルがある。いくつものバス停があった。そのひとつにラーキンと記されていた。

  ▲最下段 "LM1" と系統番号の記された右横に "LARKIN SENTRAL" とある。

しかし、いくら待てどもバスは来ない。

コーズウェイ・リンクの黄色いシャツを着たおじさんに訊ねてみた。すると、昨日のチケットは今日はつかえない、ラーキンに行くならJBセントラルの西側の通りに行ったほうがいいという。逆戻りである。

仕方がないと歩きかけたところで、おじさんがなにやら大きな声でよびとめた。遠くに停まっている赤いバスに乗れという。おじさんは大声でバスの運転手に向かってなにか叫んだ。おじさんに礼をいって、ぼくは赤いバスまで急いだ。

行先表示板になんと書いてあったかは、おぼえていない。バスに乗りこみ、運転手に「ラーキン?」と訊くと、返事は “one seventy (RM1.70)” だった。ということは、このバスでいいのだろう。あいにくコインがなかったので、RM1札を二枚だしたら、チケットだけ渡され、おつりはなかった。不親切なのではなく、そういうルールらしい──ということがわかってきたのは、あとになってからだった。

別の日、こんなことがあった。やはりバスに乗ろうとしたさいに端数分のRM0.5の硬貨をもちあわせておらず、いったんバスを降りて近くでお札を崩そうとおもった。そのようすを見ていたバス会社の地上係員が、じぶんの財布からコインをとりだし、ぼくの代わりに払ってくれたのだ。予想外の出来事に、ぼくはあわててしまった。その係員にRM1の紙幣をわたそうとしたが、かれはぼくの腕をふりながら「たかがRM0.5じゃないか」といい、けっして受けとろうとしなかった。

  ▲バス車内。日本と同じく左側通行のため運転席は右側にある。

話を戻す。

発車したバスはいったんコーズウェイの入口あたりまで南下して、あらためて北上する。シティスクエア前にも停まった。バス停は、シティスクエアからの歩道橋を降りたすぐ北側だった。

15分ほど走って、ラーキンに到着した。バスと人間であふれているように見えた。バスターミナルにたむろすひとびとが、移動のために来ているのか、たんに坐っているだけなのかはわからなかった。

チケットオフィスは、会社ごとの窓口がたくさんならんでいる。マラッカ行きのバスも複数の会社が運行しているようだ。KKKLという会社のバスが10分後に出発というので、チケットを買った。RM20.90。現金払いのみ(カード不可)。料金はどの会社でも同じらしい。ちなみに復路はDelima社のバスに乗ってみた。

チケットに乗るべきバスのナンバーが書き込まれ、それが停車しているバス停の番号を教えられる。

教わった番号のバス停へいってみたら、別のバスが停まっていた。マラッカ行きのバスは? ときょろきょろしていると、近くに腰かけていたおじさんが声をかけてくれた。そしてチケットをみて、そのへんで待っていろといった。すると、その言葉を合図にしたかのように、マラッカ行きのバスがやってきた。

バスは1-2列配置のVIPバスだった。ぼくの座席は左側の一人がけのシート。

VIP仕様のシートは一見よさそうに見えるかもしれないのだが、ぼくのような腰痛もちには厳しい。座面はやわらかすぎるし、背もたれは後傾しすぎ。とにかく腰に負担がかかる。しかも車内は猛烈に空調が効いており、30分もすると凍えてしまう。通路の反対側には小さな子どもをつれたインド系の若夫婦がすわり、全員がおもいきりシートを倒していたが、とても真似できない。(なお復路のDelimaのバスは、ふつうの2-2列のバスだった。)

定刻を少しすぎたところで、バスはラーキン・バスターミナルを発車した。とくになんの案内もなく、その後マラッカに着くまでの3時間アナウンスは一切なかった。そういうもののようだった。

つづく。