柏崎刈羽原発のPR館であるサービスホールへ行ってきた。ほぼ一年ぶりの再訪だ(昨年の記事はこちらとこちら)。
受付で一枚のチラシをもらった。「発電所構内ガイドツアー」の案内だ。昨年はこんなことはやっていなかった気がする。訊ねてみると、係員と見学用車輌の手配がつけば可能だという。お願いしてみたらOKが出た。
書類に必要事項を記入する。免許証を提示し、しばらく待つ。この間に身元照会がなされるのだとおもう。
見学はワゴン車でまわる。運転をしてくれる女性と説明をしてくれる案内嬢のふたりがつく。説明はひじょうに具体的かつ詳細なものであり、この案内嬢さんが相当のトレーニングを積んでいることは明らかだった。
正面ゲートでチェックを受けたのち、構内に入る。撮影は一切禁止とのことなので、残念ながら構内の写真はありません。
見学コースは明確に設定されており、それにしたがって構内を見てまわる。ワゴン車から出ることはできない。車内からながめつつ、解説を聞くというスタイルだ。
見学ポイントは、およそつぎのようであった。
- 電源車やガスタービン発電車などが配備されている駐車場。
- 免震重要棟。
- 1-4号機前の防潮堤。
- 1-4号機の原子炉建屋周辺の防潮設備。
- 事務棟。
- 展望台。
- 淡水貯水池。
- がれき撤去作業訓練場。
- 5-7号機前の防潮堤。
- 5-7号機の原子炉建屋周辺の防潮設備。
- 消防車の分散待機場所。
- 協力企業のプレハブ事務所群。
このリストを見ればおわかりのように、緊急時の電源や冷却水の供給体制や、防潮堤・防潮設備の増設といったところを中心に見てまわるようにコース設定されている。それはつまり、これらの諸施設こそが、東電があえて一般の人間を原発構内に入れてまで見せたいところである、ということを意味している。
周知のとおり、東電は9月末に柏崎刈羽原発の再稼働審査を申請した。この見学ツアーは、そのための広報活動の一環として、東電が同原発の安全対策をいかに十分に実施してきたかを実際に一般のひとびとに見せるものと位置づけられているのだろうとおもわれた。
ただ、これらの対策を強調することで一般のひとびとの理解を得ようという東電の姿勢にたいし、事業者サイドの発想という印象がぬぐえなかったのも事実である。こうした対策を見たからといって、一般のひとびとの多くが原発にたいしていだく不安を払拭し、原発の安全性を信じるようになるかどうかは、また別ではないだろうか。
というのは、東電のこれらの対策は、あくまで東日本大震災と同規模の災害に対応するための、いわば対処的な「バージョンアップ」の範疇を出るものではないようにおもわれるからだ。
しかし、将来的に柏崎刈羽原発をおそうかもしれない災害のすべてがその「想定の範囲内」におさまってくれるという保証はどこにもない。「想定外」の事態はつねにおこりうる。いったん「想定外」がおきたときに原発がどうなってしまうかは、フクシマの困難な状況がいまも示しつづけているとおりである。いっぽう事業者側の主張としては、エコノミーを考えれば、あらゆる災害に対応するなど非現実的だということになるだろう。それが、一般のひとが原発にいだく不安とどうにもすれちがってしまう要因のひとつとなっているのかもしれない。
なお、ぼくが原発構内に入ったのは、今回が初めてだった。一般の人間にとって、そのような機会は現在ではなかなか得られにくいようだ。その点で今回の見学は個人的には興味深い経験だった。