見わたすかぎり高校生

しばらく前のこと。那覇空港で、ぼくは羽田行きの便に乗ろうとしていた。

指定されたゲートの手前まで来て、一瞬たじろいだ。おびただしい数の人間が座りこみ、フロアを埋め尽くしていたからだ。

私服を着ていたが、高校生のようだった。手にお土産の入ったバッグをもち、背中にバックパックをずり下げて背負っていた。スズメの集団のようにおしゃべりしている。

那覇空港の搭乗ゲート前のフロアはけっして狭くはない。しかし、びっしりと座りこんだひとたちによって、フロアはすっかり覆い隠されていた。もう見わたすかぎり高校生。

修学旅行だという。こんな時期に修学旅行へ行く学校もあるのだ。知らなかった。

そしてぼくは観念した。かれらはぼくの乗る便に搭乗するのだと。

改札口近くに、パラパラと数名の大人が、なんだか申しわけなさそうにかたまって突っ立っていた。一般の乗客たちだ。あわせて10名もいないくらい。ぼくもそのなかのひとりだった。

先に搭乗して座っていると、あとからあとから高校生が湧き水のようにあらわれ、後方へ消えていった。機材はB777-300。ANAの機内誌の情報によれば座席数514だ。普通席の大半がかれら修学旅行生で占められていたものとおもわれる。ほぼ貸切状態であった。

前方のプレミアムクラスには、まだ10席ほど空席があった。ドアが閉まるころになって、そこにどやどやと大人たちが乗り込んできた。引率の先生たちらしかった。

中年男性の先生が若めの女の先生に向かって「わたしゃこんな座席に座ったことなんてありませんよ、ナントカ先生は慣れていらっしゃるでしょうけど」と大きな声で何度もくりかえす。高校生以上に昂奮しているようだった。気持ちはわからないでもないけれど、ちょっと落ち着かれたほうがよいかも。