一時帰国と在外選挙人登録

アナーバーから一時帰国しています。まったく偶然なのですが、衆議院総選挙と重なりました。せっかくのタイミングでしたが、今回ぼくは投票できませんでした。台風のせいではありません。投票資格がなかったためです。

国外居住者なので、現在日本に住民票がなく、選挙人名簿にも載っていません。その代わり、在外選挙人登録という制度があります。しかし申請から実際に投票可能になるまでには、かなり時間がかかります。ぼくのばあい、けっきょく今回の選挙にはまにあわず、投票できなかったというわけです。

在外選挙人登録の手順は以下のとおりです。

まず在外選挙人登録の手続きが始められるのは居住後3か月から、ということになっているようです(申請自体はそれ以前からでも可能)。ぼくのばあい、渡米したのは3月末ですが、しばらくはAirB&Bやホテルで暮らしていたので、アパートのめどがたって住所が確定したのち、ネット経由で居留届を提出しました。それが4月下旬のこと。

3か月経過したのち、在外選挙人登録の申請書類を在外公館へ提出しに行きました。郵送でも受け付けてくれるのかもしれませんが、よくわからなかったので、直接在デトロイト総領事館に行きました。ぼくのケースでは7月下旬には登録資格が発生するものとおもわれましたが、その時期は忙しく、申請に行くことができたのは8月に入ってからのことでした。

アナーバーから車で45分ほど走り、デトロイトのダウンタウンに立つルネサンス・センター内の総領事館へ。目の前にデトロイト川が流れており、その向こうはカナダです。下の写真がそのルネサンス・センター。

申請自体はむずかしくありません。書類は日本語ですし、領事館の受付の方の対応も親切でした。

受付後、書類は日本の地元の役所に送られて処理されたのち、在外選挙人登録証が発行され、総領事館に届くのだそうです。そのあと電話で確認が入り、その確認がとれたら登録証をアパートあてに発送、という手順になります。この間どのくらいかかるか訊ねたところ、一か月くらいでしょうか、という答えでした。実際にはほぼまる2か月かかりました。

けっきょく、在デトロイト総領事館から、在外選挙人登録証が到着した旨の連絡を受けたのは、ぼくが一時帰国したあと、東京でのことでした。入れ違い、というか、すれ違い、というか。もう一週間早く申請できていれば、ぎりぎりでまにあったかもしれません。

しかしながら、仮に在外選挙人登録証を所持していたとしても、実際に在外選挙で投票するとなると、これもまたそう容易ではないようでした。

今回の選挙、日本では10月22日(日)が投票日で、期日前投票は11日から21日まで可能でした。しかし在外選挙の投票期間は、11日(水)から14日(土)までのわずか4日間しかありません。総領事館は昼間しか開いていませんから、ふつうに働いているひとにとっては厳しい日程です。

しかも在デトロイト総領事館まで直接出向いて投票しなければなりません。在デトロイト総領事館が管轄するのは主にミシガン州とオハイオ州です。アナーバーからなら車で45分の距離ですが、同じミシガン州といっても、たとえばアッパーペニンシュラとよばれる北の地域からだと、デトロイトまで550マイル以上(約900km)あって、車でノンストップで走りつづけたとしても9時間かかります。正直、現実的とはいえません。

ほかにも、郵送での投票や、日本国内で投票することも可能ではあるようです。ただ、前者は、「請求・投票等の諸手続にある程度の時間を要することから、投票期日までに間に合わない可能性もあります」とのことですし、後者についても在外選挙人登録証を持っており、かつ期間中に日本へ一時帰国していることが前提です。

在外選挙人制度は、不正がなされないような仕組みや、投票結果の移送期間を見込む必要があったりと、いろんな制約があるのだろうと推察します。そして、関係者のみなさんもみな一生懸命努力されているのだとおもいます。

その一方、投票する側から見ると、現行の制度はけっこうハードルの高いシステムだなあという印象は否めません。現地在住の方からも在外選挙は大変だという話はうかがっていました。なかには、なるべく投票してほしくないのだろうかと訝しんでしまうとおっしゃる方もおられました(もちろん冗談です)。

いずれにせよ、国外に居住していると選挙権行使のハードルは思った以上に高くなるということはよくわかりました。

というわけで、台風のあとを追うようにして、またアナーバーへ戻ります。

*写真を2枚追加しました(171030)。