閑散の東海道をゆく

ふだん世間から距離をとるように暮らしているが、それでも無縁というわけにはいかない。前回(「風紀委員と買い占め者——9年目の自粛ムード社会」)も書いたとおり、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)にかかわる自粛ムードの蔓延には、しばしば閉口させられる。必要性のある自粛はともかく、他人にまでむやみに自粛を強要する「空気」は、なんとかならないものか。

春めく薩埵峠

用あってディフェンダーで名古屋まで行ってきた。一般道を走るぶんにはふだんとそれほど変わった印象はなかったが、高速道路へあがるとようすは一変した。東名も新東名もおどろくほど閑散としていたのだ。

いつも復路で延々とはまる厚木から横浜町田にかけての渋滞は、11km40分ほど。あっさり抜けてしまい、拍子抜けした。

途中、遠州森町パーキングエリアと足柄サービスエリアに立ち寄った。どちらもガラガラ。とくに足柄は広大なパーキングスペースを備えており、ふだんなら乗用車だけでなくバスやトラックで溢れている。今回は、ようすがちがった。大型バスは定期路線の高速バスがいただけで、観光バスは皆無。トラックも数えるほどしか駐車していない。売店では、お客さんよりも店員さんのほうが多いくらいだった。

3月の週末で、これである。観光にかかわる業界で働くひとたちは苦しい状況に追い込まれているにちがいない。

個人的には浮かれ騒ぎの大混雑は嫌いであり、ひとの数が少なくて静かな環境のほうが好ましい。とはいえ、この「自粛」ぶりはちょっと極端、やり過ぎではなかろうか。

由比「くらさわや」の桜エビのかき揚げ

時系列的には前後するが、往路は由比に立ち寄り、桜エビの天ぷらをたべた。

薩埵峠からながめる富士山。駿河湾に挟まれた崖下を東海道線、R1、東名が通過してゆく

そのあと天気がよかったので、ひさしぶりに薩埵峠に立ち寄ってみた。人間たちの行状を、それとはかかわりのない高みから、富士が見下ろしていた。

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