日本にある原発PR施設を全部見てまわる。そう決めた。この間つらつら考えてみた結論である。
試しに数人にたいして「こんなことをしてみようとおもうのだけれど」と話を振ってみた。反応はきれいに二分された。「重要だよね」と「それって何か意味あるの?」。
ぼくの関心のもち方は世間からズレていることが多いらしく、しばしば周囲には理解してもらえない。半々という今回の結果はかなりマシなほうである。とはいえ、どちらの反応が妥当なのか、いまの段階ではぼくにもはっきりしたことは言えない。
ぼくの立場から言えるのは、つぎのようなことだ。原発業界のなかでPR施設がどんな位置づけとされているのかはまったく知らないが、メディア論研究者の目からみれば、それは原発・電力業界や原子力村といったセクターが、その外部である一般社会とのあいだに直接的に構成するインターフェイスのひとつ、ということになる。
したがって、そのありようを読み解くことをとおして、原発・電力業界や原子力村が意識的・無意識的にもっている、一般社会にたいする姿勢や考え方の一端を炙りだすことができるはずだ。
具体的なことはここでは書かないけれど、若狭湾にある原発PR施設を見てまわってみて、ぼくがいだいた印象の第一は、福島第一原発事故を経ていながら、その姿勢にはなんら変化がないのだろうな、というものであった(予想されたことではあったのだが)。
むろん事故の「反省」にもとづく「対策」は強調されている。だがそこからは、むしろいっそう身を固めて防衛的になっているような印象さえ受けた。
そうした姿勢の根本に横たわるのは、「PR」という言葉にたいする一面的な、偏った理解である。おそらく「PR」という言葉がそもそも何の略語であるか、よく知らないのだろうし、どういう意味なのかじっくり考えてみたこともないのだろう(ちなみに “public relations” の略語です)。
若狭湾以外にも、日本には全国各地に原発PR施設がある。それらはどうなっているのか。とにかくすべての現場をまわり、この目で見たうえで、何かが言えれば(あるいは「何も言えない」ということが判明すれば)いいだろうとおもっている。
調査先のリストは作成済み。あとは日程の調整と旅費の工面である。