ちいさな国の出版市場——『ドリーミング村上春樹』とデンマーク

前回ドキュメンタリー映画『ドリーミング村上春樹』の話を書いた。そのつづき。

夢見る翻訳——映画『ドリーミング村上春樹』
しばらく前のことだが、『ドリーミング村上春樹』を観た。デンマーク人翻訳家メッテ・ホルムさんを追うドキュメンタリー映画だ。60分ほどと短い。作品として成功しているとは言いにくいようにおもうものの、メッテさん自身がたいへん魅力的だった。...

この映画を観ていておどろいたのは、デンマークの人口がわずか570万ということだった。千葉県の人口(624万)より、まだ少ない。 日本全体でいうならば、人口減少が騒がれながらも、1億2618万である(2019年11月、総務省統計局人口推計)。

https://www.stat.go.jp/data/jinsui/index.html/

日本語を母語とするひとの数を見てみる。英語版ウィキペディアの記事によれば、日本語のネイティヴ話者数は世界で8番目に多く、じつは言語人口はそこそこ大きい。

List of languages by number of native speakers - Wikipedia

デンマーク語のネイティヴ話者はせいぜい600万人ほど。いわゆるマイナー言語である。

Danish language/ - Wikipedia

人口だけでいえば、デンマークは日本の1/21しかない。そんなちいさな国デンマークに、質の高い読者をかかえた出版市場があるらしい。

https://denmark.dk

デンマークの出版市場とは、どのくらいの規模なのだろうか。

ネットで調べてみると、こんな記事がみつかった。どこまで確かなデータなのかはわからない。ともかく試しにざっくり日本と比較してみた。雑なことには目をつむっていただき、参考程度に受けとめてもらえればとおもう。

403 Forbidden

記事によれば、23億5000万デンマーク・クローネほどの売上があるようだ(2017年)。日本円に換算して、約379億円。ここにはおそらく電子書籍は含まれるが、雑誌は含まれない。産業としては小規模だろう。

いっぽう、日本の出版市場は減少をつづけているといわれるが、それでも1兆5000億円ほどある。ただし日本のばあいは雑誌込みなので、書籍だけだとおよそ7000億円。

前述のとおり、日本はデンマークの21倍の人口をもっているから、単純に計算すれば、人口あたりの市場規模はほぼ同じか、若干日本のほうが小さめ、ということになる。

もっともデンマークにおける出版物は、デンマーク語だけでなく、英語などもあって、多言語的であるようだ。そして、今後もゆるやかに成長する見通しらしい。これだけ小規模の言語人口でも、質の高い読者がおり、出版が産業としてそれなりに成立しているという事実は、ぼくにはひじょうに興味深く感じられる。

出版を産業として考えるとき、市場規模はたしかに大事だろう。だが、その大小がすべてではない。きちんとした出版物をきちんと出版し、それを読むべきひとがしっかり読むという回路は、多様な形で成り立ちうる、ということだろう。

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