映画『太陽』

アレクサンドル・ソクーロフ監督の『太陽』(2005年)を観てきた。昭和天皇を扱ったという(日本的な)「話題性」ゆえにいろいろ言われているようだが、この作品で描かれるのは、歴史や(狭い意味でいう)政治というよりも、神話である。「神」から「人間」へ、という神話だ。

だからこの作品は、よくよく抑制された陰鬱とした映像美や、その漆黒から低く鋭くえぐるような控えめな音楽といった表象にたいして、とりたてて劇的な展開はなにも起きず淡々としていながらチョー明るく肯定的な物語とが対称をなし、せめぎあうことで成立している。

その意味で、イッセー尾形のヒロヒトだからこそ可能になった作品というべきだろう。ただ全体的にいえば、役者たちの演技は、じぶんたちが意識しているほどに抑制されてはいなかった。

公開四日目、11時からの初回だった。すでにほぼ満席。立ち見も出た。年配のひとと若いひとの割合が6対4といったところか。この作品の成り立ちに相応しい観客構成であるだろう。

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