ランクル80がわが家に来たのは2003年12月の初めだった。初度登録は1995年だから、その時点ですでに8年落ちだった。
その前に乗っていたステップワゴンは、わずか18カ月で手放すことにした。一度手に入れたものは長くつかうタイプの人間として、これは異例のことであった。
理由はキャンピングトレーラーだ。当時トレーラーを買うつもりでいて、そのトラクターとして力不足が否めなかったからだ。ステッピーは気さくで、ホンダ車らしくよくまわるエンジンがたのしかった。だが逆にいえば、まわさないと走らないという性質でもあった。トルクが細いため一家フル乗車時には苦しい。車体剛性も足らなかった。走っていると、ときおり車体がよじれるような感覚があった。
好みからいけばランクル70ディーゼルあたりがよかったのだが、すでに排ガス規制が始まっており、市川は規制区域内だから選択肢に入れられない。100系は中古でも高価すぎたし、あのセルシオ的ラグジュアリー路線が性に合わないのとで見送った。そこで、価格的にもこなれていた(それでもぼくにとっては十分高価ではあったのだが)ランクル80に絞ることにした。
四駆好きだが、オフをやるわけではない。ナッジバーやインチアップなどのいかにもRV的な装備は不要、背面タイヤもなくてよく、できるだけノーマルに近い禁煙車。そんな条件のもと、あれこれと探しまわって何台か試乗し、最後に出かけていった光が丘の東京トヨタ中古車店で、出会った。
このように、どちらかといえば、積極的というより、消去法の現実解ということで選んだのがランクル80だった。ところが、乗りだしてみると、たちまち、この車の気質のよさに魅せられるようになった。
ひと言でいえば、まじめで健気。ステッピーが『きかんしゃトーマス』でいうとパーシーみたいな感じだったとすれば、ランクルはエドワードだった。エンジンはじゅうぶん力強く、車体は堅牢。シートの造りは文句なく、サードシートをつかわずとも家族5人がゆったり坐れる。それでいて室内はそこそこ静粛。信頼性は高く、ほとんど故障らしい故障もない。中長距離の旅行にはうってつけだった。
とはいえ、横幅1930mmもある車体は巨大すぎた。日本の、とくに道の真ん中に平気で電柱が生えていたりするような市川界隈では、神経をつかわざるをえない。うちの前の道なども狭く、一部は左右にほとんど余裕がない箇所があった。入り方をまちがえると、欲ばって穴にスタックしたクマのプーさんのように身動きできなくなってしまう。
もちろんそんな環境だから、冷静になってみればキャンピングトレーラーなど入庫できるはずもない。さらに子どもが大きくなって部活などが忙しくなり、またぼく自身の身辺も何かと忙しくなってきた。いつのまにか、キャンプどころではなくなっていた。
だからせっかくのランクルも、ふだんはさして出番があるわけではなかった。そういうときでもランクルは、おりこうな番犬のようにして、いつも同じ場所にいて、ただ静かにたたずんでいた。それでも、いざ出動となれば、一発でエンジンがかかるのだった。
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