『スノーデン 独白——消せない記録』(河出書房新社)の書評を執筆しました。『週刊読書人』2020年2月28日号に掲載されています。
本書はエドワード・スノーデンの自伝。スノーデンは、アメリカの諜報機関にコンピューター・エンジニアとして深くかかわったのち、国家をあげて大量盗聴するシステムを秘密裏に構築・実装している事実を告発した人物です。本も何冊かでているし、映画もつくられているが、日本でかれの論点がどのくらい共有されているかというと、必ずしも十分とはいえないようにも見えます。
それは、ネットの利用が当たり前なものになりすぎているからかもしれません。TwitterやインスタやFacebookやらに今日どこで何をしたということをいちいち投稿したり、Amazonで買い物したり、いまぼくがこうしているようにブログになにかを書いたりするたびに、ぼくたちはそれとはっきり自覚することなくみずからを切り売りしていることになります。
GAFAのようなプラットフォーマーであればぼくたちユーザーが徹底的に商品化されるのだし、国家であれば個人の私的な空間・時間が無効にされ、すべてを(少なくとも潜在的には)監視・管理下におかれることになる。
その結果がなにをもらすかは言うまでもないでしょう。しかしそれが目の前で明白になるまでにはタイムラグがある。一方で、ネットを利用すればわかりやすい「成果」がただちに手に入る。「便利」「つながり」「たのしい」「暇つぶし」「儲かった」といった形で。でもそれは所詮、見せ金です。結果的に、監視資本主義の真の帰結を隠蔽するべく作動している。かといって、ネットを一切拒否するのも現実的とはいえない。その矛盾のなかを、ぼくたちはどうやって生きてゆけばいいのか。
さて、世の中はいま新型コロナウィルスの騒ぎで大変なことになっているようです。好むと好まざるとにかかわらず、ふだんより自宅で過ごす時間が増えているケースが少なくないのではないかとおもいます。もしそうなら、その増えた時間の幾割かでも、本を読むことにあててみてはいかがでしょうか?
本はいいですよ。読書以上に有意義な時間の使い方は、そうそう他にありません。