初日に観た。ここ数年のハリウッド産ミュージカル映画は、良し悪しはともかくとして、比較的緊密に構築された作品が多かった。本作品はその対極、もうゆるゆるである。
ほとんど舞台そのまま。素朴な手づくり感覚というか、とっても素人っぽい。つくっている側が映画として何を撮るべきかよくわからないまま、とりあえずアバの楽曲を強調しつつ、物語だけ追ってみましたという出来上がりである。
もっともこの作品も、ミュージカルのある種の伝統を正統的に継承しており、設定とプロットだけとりだせば荒唐無稽を絵に描いたみたいなものだ。だから、それだけ追ったところで、莫迦ばかしい以上のものになるはずがない。そこから音楽をとったら、ほかになんにも見あたらない。こういうのを「明るく楽しく元気が出る」と評するひとがいるが、きっと勘違いか無知か、あるいはその両方だろう。
危惧されたとおり、メリル・ストリープは浮きまくり。こってりした演技を旨とする彼女は、もとより暗い。本人も重々承知しているはずだ。だから愉しげな気分を演出しようと、ことさら熱心に「軽み」ある演技をしてみせる。重ねれば重ねるほど、ドツボにはまってゆく。痛々しいというほかない。
ターゲットは明らかに、アバの曲にノスタルジーを覚える世代にある。その狙いがあたったがゆえに、世界中でこれほど観客が入ったということなのかもしれない。ぼくが観たときも盛況だったが、世代構成は、ターゲットよりもずいぶん上下に振れ幅が大きい。かれらに向かって終映後、ほんとにたのしかった? と大声で訊いてみたい気持ちに駆られた。