かえる

かえるが路肩にいた。拳くらいの大きさのがまがえるだ。

昨夕のことだった。場所は、品川へ向かう高輪三丁目の裏道だ。どこからやってきたのだろう。かえるが棲息できそうな場所とはおもわれなかったのだが。

台風26号の雨が降っていた。夕方でもうほとんど暗かった。

うっかり道のまんなかへでてゆくと危ないぞとおもった。だが、かえるは路肩のほうを向いていたので、そちらに逃げてゆく途中であるようにも見えた。雨も烈しかったので、そのまま帰ってきた。

翌朝──というのは今朝のことなのだが、台風が首都圏を襲い、交通機関も大いに乱れた。ゼミは休講にしたものの、会議があるので大学へはでなければならない。

昨日の場所をとおりかかると、道の端にかえるが仰向けになっていた。死んでいた。外見はとくにいたんではおらず、クルマに轢かれたというようには見えなかった。口にちいさな葉っぱが一枚、ひっかかっていた。

昨夕のかえると同じかどうかはわからなかった。昨夕の場所からは少し離れていたが、たぶんあのかえるだろうとおもった。

せめて土の上に動かしてやれればよかったのだが、そんな場所は見あたらなかった。それで、そのままにして帰ってきてしまった。

しかし、やっぱりどこかへ動かしてやればよかったと、いまごろになって、ちょっと後悔している。