こまどり姉妹を追ったドキュメンタリー。古くから活躍する二人組の女性演歌歌手である、という以上の知識をほとんどもたないまま観た。
実の姉妹である二人の語る一代記がそのまま物語となる。1938年北海道生まれ。戦時中は樺太に渡っていたこともある。その後の人生はじつに紆余曲折。食うや食わずの生活、山谷暮らし、浅草での流し、デビューとヒット、紅白に数年続けて出演して絶頂をきわめた矢先、妹がファンに刺されて大けが、さらに癌にも襲われ闘病生活に入る。人気は一気に凋落してどん底に。ムード歌謡への路線転換をはかったりと迷走する。追い打ちをかけるように父母が亡くなり、姉は未婚の母となる。──なんとも浮き沈みの烈しいジェットコースター人生である。
しかし、なかなかに壮絶なそうした半生を、いまや70を越えた老姉妹は笑い飛ばしてみせる。そのしたたかさと逞しさが、この作品をカラッと乾いたユーモアでくるんでいる。
現在彼女たちはおもに各地の健康センターなどをまわって公演をしているらしい。「よく見えますか、厚塗り」などと言いながら会場をまわって中高年男性たちと握手してまわる。背中の帯の結び目には客からのご祝儀として万札が何枚も差しこまれてゆく。その姉妹の姿は、さながらアンギラスのごとし。
映像は、古い記録映画や彼女たちの出演映画やテレビ番組、スティール写真、インタヴュー、公演のようすなどで構成されている。演出はテンポがよい。昨今のこの種の映画にありがちなあざとさもない。タイトルのみならずタイトルバックも秀逸だ。
製作はアルタミラピクチャーズである。ここはフジテレビと組んだ若者向け大作映画で儲けるかたわら、昭和歌謡曲史やフォークを題材にしたドキュメンタリーをこつこつ撮っている。こうした姿に、こまどり姉妹的なしたたかさと逞しさを見出すこともできよう。その姿勢はもっと評価されてよいのではないか。